海外取引で商品を仕入れる際、輸送方法の選択はコスト・スピード・リスクに直結します。
ここを理解しておかないと、想定外のコストや納期遅れにつながりかねません。
今回は、海上輸送(FCL / LCL)と航空輸送(AIR) を中心に、物流の基本ポイントを解説します。
1. 輸送方法の種類と特徴
海外から商品を輸入する際、主に以下の2種類の輸送手段があります。
輸送手段 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
海上輸送(Ship) | コンテナを使用。大量輸送向け。FCL(フルコンテナ)、LCL(混載便)がある。 | 大量輸送でコストが安い | 輸送に時間がかかる(2〜6週間) |
航空輸送(Air) | 飛行機で輸送。 | 納期が早い(1〜7日程度) | コストが非常に高い |
2. 海上輸送の基本(FCLとLCL)
FCL(Full Container Load:コンテナ単位輸送)
- 1社で1本のコンテナをまるごと使用する輸送方法。
- 荷物が多く、コンテナを一杯に使う場合に適している。
- コストはLCLより割安(単価ベース)。
代表的なコンテナサイズ
コンテナ種類 | 容量目安 | 積載例 |
---|---|---|
20フィートコンテナ | 約28㎥、最大重量 約21,000kg | 中規模出荷 |
40フィートコンテナ | 約58㎥、最大重量 約26,000kg | 大規模出荷 |
40フィートハイキューブ | 約68㎥、最大重量 約26,000kg | 嵩張る商品向け |
メリット:
- 他社と混載しないため、破損や紛失リスクが少ない。
- 荷役がスムーズ。
デメリット:
- コンテナを満たすだけの荷物がないと割高。
LCL(Less than Container Load:混載輸送)
- 1本のコンテナを複数社でシェアする輸送方法。
- 荷物が少ない場合に利用される。
メリット:
- 少量輸入でも利用可能。
- 初回のテスト輸入に向いている。
デメリット:
- 他社貨物と一緒になるため、破損や紛失のリスクが上がる。
- コンテナの開封・再梱包作業があるため、港での滞留時間が増える。
3. M³(立方メートル)の計算方法
海上輸送や航空輸送のコスト計算では、M³(立方メートル)が重要な基準になります。
荷物の縦・横・高さをメートル単位で測り、以下の計算式で求めます。
計算式:
M³ = 縦(m) × 横(m) × 高さ(m)
計算例:
- 縦:0.50m
- 横:0.40m
- 高さ:0.60m
0.50 × 0.40 × 0.60 = 0.12 M³
もし同じサイズの箱が50個ある場合:
0.12 × 50 = 6.0 M³
LCL(混載便)の場合
LCLは1M³あたりいくらという形で料金が計算されます。
例えば、1M³あたり100ドルの場合、6M³なら
100 × 6 = 600ドル
航空輸送の場合
航空輸送では、**重量と容積のどちらか大きい方(課金重量)**で料金が決まります。
計算式:
容積重量(kg)= 縦(cm) × 横(cm) × 高さ(cm) ÷ 6,000
例)50cm × 40cm × 60cm の箱の場合
50 × 40 × 60 ÷ 6,000 = 20kg
実重量が18kgなら課金重量は20kgとなります。
注意:
この「6,000」という係数は国際航空輸送の一般的な基準ですが、
会社によっては 5,000 を採用している場合もあります。
利用するフォワーダーに必ず確認しましょう。
4. 航空輸送(Air Shipment)
航空輸送はスピードが最大のメリット。
サンプル出荷、緊急の納期対応、初回取引など少量・高単価商品の輸入に最適です。
特徴:
- 発送から到着まで1〜7日程度と早い。
- 重量や容積によって料金が決定される。
- 航空貨物は国際空港を経由するため、通関が比較的スムーズ。
コスト目安:
- 海上輸送の約5〜10倍程度。
5. インコタームズと輸送条件
輸送条件はインコタームズ(貿易条件)によって決まります。
代表的なのが EXW、FOB、CFR です。
用語 | 内容 | サプライヤー負担 | バイヤー負担 |
---|---|---|---|
EXW(Ex Works) | 工場渡し条件。工場から先はすべてバイヤー負担。 | 工場での商品引き渡しのみ | 工場→港、積み込み費用、海上運賃、保険料、通関費用などすべて |
FOB(Free On Board) | 本船に積み込むまでがサプライヤー負担。積み込み以降はバイヤー負担。 | 工場→港、港での積み込み費用 | 海上運賃、保険料、通関費用 |
CFR(Cost and Freight) | 海上運賃までをサプライヤーが負担。 | 工場→港、積み込み、海上運賃 | 保険料、輸入通関費用 |
確認例文:
Is the quotation based on EXW, FOB, or CFR?
(お見積もりはEXW、FOB、またはCFRベースでしょうか?)
6. 輸送コストを左右するポイント
- 輸送方法の選択
- 納期が迫っていれば航空便、コスト重視なら船便。
- コンテナサイズ
- 20フィートか40フィートかでコストが大きく変わる。
- 混載便(LCL)は少量でも利用可能だが、単価が割高。
- 輸入港の選択
- 東京港、横浜港、大阪港など、自社倉庫に近い港を選ぶと陸送費を削減可能。
7. まとめ
- 船便はFCL(コンテナ単位)とLCL(混載便)の2種類がある。
- 航空便は早いがコストが高い。サンプルや緊急輸送に向いている。
- M³計算を理解することで、輸送コストの見積もり精度が大きく向上する。
- 航空輸送は課金重量の計算係数が6,000基準だが、5,000を採用する会社もあるため要確認。
- EXW・FOB・CFR は「費用負担の境界線」を明確にする重要な貿易条件。
- 初回は少量ならLCLや航空便を使い、販売計画が安定したらFCLでコストダウンを狙う。
次回予告
第6回では、「不良品が発生した場合の対応」について解説します。
返品・修理・保証対応でよく使う英文フレーズも紹介予定です。
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